これは私が今まで学んだ動物行動学・動物心理学、尊敬するドッグトレーナーのシーザー・ミランの考え方や接し方をまとめたしつけのメソッドです。
決して難しいことではありません。読む人によっては「当たり前でしょ」と思う方もいるとは思いますが、もう一度意識して愛犬と接してみてください。
効果を実感するにはある程度の時間がかかりますが、意識して行っていたことが無意識でできるようになっているころには愛犬は大きく変わっていると思います。
愛情だけでは、良い関係は作れません。実際、問題行動があった時、より多くの愛だけでは状況を好転させることはできないです。
また問題行動で困っていない飼い主さんにもぜひ一度は読んでもらいたい内容になっています。
ここで使われている「パック・リーダー」と「群れ」の定義です。
リーダーとは、「付き従う者がいること」です。ここでいう「付き従う者」というのは、「強制力を持って従わせられる者」ではありません。逆に「そのリーダーを信頼するがゆえに自らの意思に基づいて従う者」という主体的、能動的な意味。
簡単に言えば、「この人の言うことを聞いていれば間違いない、この人に一生ついていこう!」と思われる存在なるということです。
こう考えればリーダーの必要性をわかってもらえると思います。
人間一人、犬一頭いれば、それはもう群れです。
ですからペットとして飼われている犬は、すべて群れで生活しているといえます。
そしてその群れは、リーダー一人と残りのそれに従うものに分かれます。猿のように順位がある縦社会ではありません。
1.犬の本来の姿
2.バランスの取れた犬にするために
3.パック・リーダーの実用テクニック
犬の本来の姿
犬の本来の姿はどういうもので、自然な状態でいるためにはどうすればいいのか。犬の精神状態を探るうえで、ぜひとも知っておきたいことです。
1.動物としての本能
2.イヌとしての本能
3.犬はエネルギーで相手を見る
4.犬は人間が「見る」世界を、「嗅いで」いる
5.犬はすべてをイメージで記憶する
犬はネコ目イヌ科イヌ属という種類ですが、それ以前にまず動物です。
動物は過去でも未来でもなく今だけを生きており、本能(=目の前の欲求)しか頭にありません。たとえ飼い犬であっても、動物としての本能が最優先されます。そうした欲求を満たすことが、犬の生活で一番大事なことであり最強の動機になります。
イヌは社会的動物であり群れを作って生活し、リーダーの指示に従って忠実に役割をこなすことに喜びを感じる動物です。頼りになるリーダーの存在は、食べ物と同じくらい重要でもはや本能といってもいい。リーダーに指示されて動きたい本能が十分に発揮できない犬は、精神の安定を崩してしまいます。
また動物・イヌとしての本能はすべての犬に共通していますが、犬種の個性も犬の行動を形作る重要な要素になっています。
犬は私たちが思っている以上にエネルギーを感じ取り、言葉以外の態度やふるまい、つまりボディランゲージに敏感に反応しています。人間の声を聞くときは、その調子や抑揚よりも、声に込められたエネルギーを受け止めています。
犬が感じている世界と、人間が感じている世界は同じではありません。
例えば初対面の人に抱く第一印象は、人間は見た目で決めますが犬は匂いで判断します。
感覚情報が脳に伝わる順位
人間 ①視覚 ②触覚 ③聴覚 ④嗅覚
犬 ①嗅覚 ②視覚 ③聴覚 ④触覚
犬は、人・場所・物などをイメージで記憶しています。
イメージは良い・悪いだけとは限らず、興奮・落ち着きなどもあります。
つらい目にあった犬は、楽しいイメージに置き換えてあげる必要があります。ただしイメージが強いと、置き換えは簡単ではありません。
バランスの取れた犬にするために
これはバランスのとれた犬にするために必要な七つの原理。穏やかで従順な犬になるかはすべて飼い主次第です。
1.人間扱いしない
2.犬の過去に囚われない
3.動物・イヌ・犬種の順序で本能を満たす
4.大切なのは、鼻・目・耳の順序
5.自分の犬の性格を知り、それを受け入れる
6.自分のエネルギーを意識する
7.パック・リーダーになる
犬はあくまで本能で動く動物であって理性のある人間ではありません。人間のように扱われる犬は、バランスを崩して行動にも問題が出てきます。
「人間扱い」でよく見かける行動
①犬に人間と同じふるまいをさせる。テーブルで食事をする、家族のベッドで寝るなど。
②犬の行動やボディランゲージ、顔の表情に人間の感覚や感情を当てはめる。
③身体を保護したり、寒さから守るといった目的を外れて、犬に服を着せて飾り立てる。
④犬が人間の言葉を理解し、解釈できると期待する。
⑤不安がっている犬を慰める、興奮している犬に同調するなど、人間のときと同じ対応をする。
犬は今この瞬間だけを生きています。例えば脚や聴力、視覚を失った犬はそのことを嘆いたりしません。残された能力で対処していくだけです。
犬をリハビリできるのも、今この瞬間だけを生きる性質のおかげです。犬は、過去の行いを後悔したり、未来のことを不安がったりせず、目の前にあることを素直に受け入れ、学び続けます。
この事実を人間が忘れてしまうと、リハビリやトレーニングの妨げになることがあります。
三つの要素を正しい順序で理解し、それぞれが行動に与える影響を知ることが重要です。
犬が本来持っているエネルギーと本能をうまく引き出して、人間にも犬にも望ましい行動へと導くことが大切。押さえつけるのではなく、方向を変えてあげます。
犬は世界のほとんどを鼻で知ります。人間は視覚で知ることが多いので犬も同じだと考えがちですが、犬は嗅覚の生き物だということを覚えておきましょう。
犬の性格は生まれた時から決まっていて、大きく分けて3つに分けられます。
その性格は犬のエネルギーやボディランゲージから判断できます。性格が分かったらその性格を尊重し、人間の都合でその性格に合わない仕事などを強要してはいけません。
好奇心旺盛で活発なタイプ
好奇心が旺盛で何にでも興味を持つ活発なタイプ。能力が高く自信に満ちています。じっとしているのが苦手な子が多い。エネルギーが高いので、飼い主もそれに負けないエネルギーを発揮してリーダーシップをとらないと、犬は自分がリーダーのように振る舞うようになってしまいます。
のんびりマイペースタイプ
のんびりした性格でマイペース。気分が安定していてめったに動じません。エネルギーが安定しているので家庭犬としては一番飼いやすい。今までしつけらしいしつけをしていないのに、問題行動を起こしたがないという子は大半がこのタイプです。
恐がりだが感性の鋭いタイプ
エネルギーは低いが感性が鋭く、周囲を注意深く観察して危険が迫っていないか警戒する、とても慎重なタイプ。恐がりな子が多いので、パピーの時の社会化が特に重要。また自尊心が低いので高めてあげるために、ささやかでも何か目標を達成させて自信を持たせてあげることが大事です。アジリティなどのような達成すべき目標が明確でそのことだけに集中できるものがおすすめ。
飼い主のエネルギーは、良くも悪くも飼い主自身の心と身体の状態です。そしてそのエネルギーはそのまま犬に伝わってしまいます。
飼い主がリードを持っているとワンワン吠えている犬を、別の人がリードを持つとピタッと吠えやむことがあります。これはリードを持っている人の穏やかで毅然としたエネルギーが伝わっていたからです。
飼い主が不安だったり、神経質だったり、過度の興奮状態だったり、怒りや不満を抱えていたらネガティブなエネルギーが伝わり、犬のエネルギーは不安定になります。反対に常に穏やかで毅然としたエネルギーを放つと、犬のエネルギーは安定します。
自分自身をコントロールできない人に、犬をコントロールすることはできません。
飼い主の悩みのほとんどは、リーダーシップ不足が原因です。リーダーの存在がないと犬は精神状態のアンバランスを引き起こし、不安や破壊、無駄吠え、攻撃といった問題行動に出てしいます。
また飼い主がルールをその場しのぎで変えたりすれば、犬は飼い主を信用しなくなるので絶対しないようにしましょう。
パック・リーダーの実用テクニック
テクニック自体はシンプルですが、実践を続けるのは簡単ではありません。その効果を実感するにはある程度時間がかかるし、熱意を持って取り組む必要があります。
1.穏やかで毅然としたエネルギーを放つ
2.運動・しつけ・愛情 この順序を厳守!
3.規律(ルール・境界・制限)
4.散歩を極める
5.ボディランゲージを読み取る
なぜこの順番が大事なのか。それは多くの飼い主が一番に愛情を与えているからです。決して愛情を与えることが悪いと言っているのではありません。愛情を与えるタイミングが重要なのです。
愛情は犬が穏やかで従順な状態でいる時にしか与えてはいけません。それ以外の時、例えば興奮している時に愛情を与えればそれは興奮を助長していることになります。
まずは十分に運動をさせてエネルギーを発散させます。体を動かして疲労した犬は元気な時より従順になるので、次にしつけをします。そしてそのご褒美として愛情を与えるのです。
この基本的な考えを決して忘れてはいけません。
①運動
運動は飼い主が絶対に果たさなければならない責任のひとつです。
運動で緊張やストレス、余った体力を発散させます。
②しつけ
しつけとは“懲罰”ではなく、ルールを守って行動するようトレーニングすることです。「飼主と犬がルールに従って力を合わせて行動できるようになること」、それがしつけの狙いです。
しつけで一番大切なのは、飼い主が求めた時にすぐに穏やかで従順な状態になれること。そのためには、十分な運動で犬の体力を使っておくことが近道。体を動かして疲労した犬は、元気な時より従順になります。
逆に問題なのは、甘やかして小さな人間のように扱うこと。しつけの出来ていない犬は、飼い主が指示しても聞かなくて当然です。なぜなら犬は飼い主のことは好きでも尊敬はしていないからです。どんな犬でもルールを明確に定めてあげると尊敬するようになり見違えるように変わります。
③愛情
愛情は大事ですが、愛だけでは良い意関係は作れません。実際、問題行動があった場合、より多くの愛だけでは状況を好転させることはできないです。
犬は行き過ぎた関係は愛とはみなさず、弱いエネルギーと理解します。リーダーシップは静かで独断的なエネルギーのみであり、愛すべき弱いエネルギーではありません。誰一人としてリーダーシップを発揮している人がいないと、犬はその地位を自分に定義づけます。
また愛情は与えるタイミングが重要です。愛情表現にはいろんな形がありますが、どんな形であれ犬が穏やかで従順なエネルギーでなければ愛情を与えてはいけません。興奮したり、不安や恐怖に襲われているときに可愛がると犬はそれが正しいと認識し、犬の問題行動を助長します。その行動をすれば、飼い主の気を惹けると学習してしまうからです。
しかし実用テクニックの中で、犬のやる気を一番掻き立ててくれるのも愛情ですので、上手に使いましょう。
犬はやっていいことと悪いことを知っておく必要があります。それを教えるのがパック・リーダーの役目で少なくとも「座れ」「待て」「伏せ」「来い」「離せ」は徹底させましょう。
犬はリーダーからの道標がないと、不安や不満を抱えるので破壊的・攻撃な行動を起こしやすくなります。犬は導いてあげることが必要な動物なのです。
飼い主がルール・境界・制限を定めて、強力なリーダーシップを発揮すれば、犬は従順になります。
散歩で運動させる目的はふたつです。ひとつはあり余る体力をメリハリのある自然な形で発散させること。もうひとつは飼い主と犬の絆を深めることです。
散歩の時は、リードを短く持ち常に緩んだ状態で決してリードは張ってはいけません。
犬は横または後ろを歩かせ、散歩を始めてからしばらくは余計なことはさせず、ひたすら飼い主さんのペース、飼主さんの行きたい方向に歩きます。あちこち匂いを嗅いだり排泄させるのは、その後のご褒美です。ただし、ご褒美の時間が歩いている時間より長くなってはいけません。
散歩中は“散歩をしているこの瞬間”だけに集中してみる。理想の散歩を思い描きながら、目の前の風景、匂い、聞こえてくる音に集中するのみ。気持ちが揺れて不安が頭をよぎったら、自分の呼吸に意識を向けましょう。
また散歩は犬にとって運動になるだけでなく精神的な刺激も得られ、バランスを保つ最善の方法です。
そして犬のバランスを保つための様々な方法をいっぺんに試せるのも散歩の時です。運動としつけだけではなく、可愛がることもできるし、信号待ちでは座るなどのルールを定めたり自然と触れ合ったりすることもできるからです。
犬同士はお互いのボディランゲージを本能的に理解するし、人間のボディランゲージも彼らなりに解釈しています。
ただし人間と同じ解釈だとは限りません。例えば、初対面の人が正面から向き合って触れ合うのは人間同士なら当たり前ですが、犬のボディランゲージでは、相手の正面に立つこと、目を合わせて見つめあること、声を出すことは攻撃性を意味している場合もあるので注意が必要です。
いかがでしたか?新しい発見もあったともいます。
ぜひ実践してみてください。
ドッグトレーニング KUMAでは、犬だけを治すのではなく、飼い主さんが愛犬をもっと深く理解し、犬を導けるリーダーになれるようコーチングします。
そして、人と犬を含めた家族全体のバランスを整え、調和するお手伝いをします。
私たちは犬の問題と向き合う中ことで、多くを学び、犬と共に成長し、自分の可能性を広げる事が出来ます。
ドッグトレーニング KUMAでは問題行動解決のサポートを通じて、犬と調和・共存する素晴らしさを、皆さんにお伝えしていきたいと思っています。
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